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論外とは?/ マイワン

[ 236] 兎と亀−論外編−
[引用サイト]  http://www.honya.co.jp/contents/manjimaru/57.html

亀に惨敗した兎は、肩を落として帰宅した。子どもらに会わせる顔がない、とでも言わんばかりの落ち込みようだ。一族からは袋叩きにされるであろう、と恐怖しているのかもしれない。
「そのまえに、勉強しなさい! ほら、宿題はやったの! 時間割は揃えたの! 兎子! お菓子ばかり食べてると太っちゃうわよ! 兎男! テレビは消しなさい! そんなものばかり観てるとお父さんみたいになるわよ!」
父兎の背中が引きつったようだが、誰も気づかなかった。壁に向かって「ちぇっ」と舌打ちしたようでもある。
兎族と亀族の直接対決は4種目ある。玉入れ、騎馬戦、玉転がし、リレーだ。リレーはリベンジに燃える兎一家の子供4人が代表選手に選ばれていた。母兎は朝早くに父兎を「場所取り」に向かわせると、これでもかと力を込めて、お握りを握った。亀族への憎しみをぎゅうぎゅうに詰め込んでもいるようだ。
父兎は、既に酔いつぶれて鼾(いびき)をかいていた。朝っぱらから酒を呷(あお)ったようだ。元々酒好きではあったのだが、亀に惨敗した後、とみに量が増えたのだ。
そんな父兎の背中をギュー! っとつねり上げた母兎は、「ほほほ」と高笑いを見せたのだった。「このバカおやじ!」とでも言わんばかりに顔がヒクついている。
と叫び声一つ、父兎が飛び起きた時、第一種目の玉入れが始まった。兎と亀がわらわらと運動場に集まった。
母兎は優しい声で応援を始めた。母亀と短い言葉も交わしているようだ。「亀さんには負けますよ」などと白々しい事を言っているようだ。
一方、子兎達は必死だった。万が一亀どもに負けるような事があれば、母兎に叱責される。それが怖くて我武者羅に玉を掴んでは籠に投げ込む……つもりだが、焦ってしまった。兎の手は短く、しかも掴んだ物を己の口の高さまでしか運べないことに今、気づいたのだ。天は強靭な足を兎に与えはしたが、腕には無頓着だった。食物を採取するだけの機能しか与えていなかったのだ。こんな貧弱な腕では玉を籠の高さまで放り投げることは不可能だ。子兎らの脳裏に母兎の般若顔が浮かんだ。
その幻影を払いのけるかのように、長女兎は力いっぱい腕を伸ばした。なんとしても、籠に玉を入れねばならないのだ。
次の種目は騎馬戦だ。これには父兎も身を乗り出した。格闘技が好きなのだろう、目を血走らせて応援を始めた。
父亀が笑いながら父兎に声をかける。三週間前に世紀の一戦を終えた両者だ。勝者の栄冠を勝ち取った父亀と惨めな敗者となった父兎。馴れ馴れしく声をかけてきた父亀に血眼を向ける父兎であった。
父亀は余裕だ。もともと呑気な性格なのだろう、嫌味を言われているとも気づいていないようだ。そのうち、競技は始まった。
子兎は必死だ。玉入れの屈辱を晴らさなければ、母兎に何を言われるかわかったものじゃない。算数の勉強も沢山やらされることになりそうだ。特に長男兎の恐怖が大きかった。
一気に駆け寄り踏み潰してくれる。ぴょんと一歩を踏み出した。しかし……上に長男兎を乗せたまま飛び跳ねたものだから、着地に失敗した。重いのだ。
足首を妙な方向に捻じったかとおもうと、もんどり打って倒れ込んだ。長男兎は前方に放り出され、しこたま顔面を打ち付けた。
「なに言ってるのよ! あんたは、子供のことぜんぜんみてくれないじゃない。いつも呑んだくれてばっかで。私がどれだけ大変な思いをしているのか、わかってないでしょ! 冗談じゃぁないわよ」
言葉数では母兎にかなうわけがない。しまった、妙な事を言っちまったと後悔したのであろうが、すでに手遅れであった。「機銃掃射」には「沈黙」で応えるしかない。父兎はあらぬ方向へ視線を移すと黙り込んでしまった。
しばらくすると母兎も静かになった。玉転がしで兎組が惨敗したのだ。三男兎が、勢い良く転がしていた大玉に前歯を突き刺してしまったのだ。やはり短い腕が禍(わざわい)してしまったのだろう。突き立てた前歯が抜けなくなり、大玉と一緒にごろごろと転がっているうちに競技は終了した。
そして、運動会も最終種目を迎えることとなった。花形の動物対抗リレーだ。今年は、亀族対兎族。運動会も絶頂を迎えた。
この時ばかりは、父兎も母兎も一致団結。一緒に仲良く声を合わせた。父亀や母亀が側にいることも忘れて熱の入った応援を続ける。
隣にいた父亀と母亀は、微笑みながら兎夫婦の応援を聞いていた。お酒を飲みすぎると体に毒ですよと優しく声もかけている。「器」が違うのだ。亀は「おおらか」なのだ。
だが……、バトンを落としてしまった。玉入れで脱臼したのだ。巧くバトンが握れない。走っては落とし、落としては走る。幾度となくこれを繰返しているうちに、第二走者へバトンを渡すこととなった。亀組とは差がない。同時だ。
兎三郎は元気良く……飛び出せない。大玉が前歯に接合しているのだ。まともに走れるわけがない。ごろんごろんとあらぬ方向へ転がりながら、どうにかこうにか運動場を一週した。亀組とは……やはり差がつかない。というか、遅れなかっただけ、マシだ。
とは言えなかった。騎馬戦で挫いた足ではまともに走れない。ひょこひょこと亀並みのスピードで歩くしかないのだ。
長男兎の兎男はほくそえんだ。観覧席をちらりと見やった。大声で喚き散らしている父兎と母兎の姿が見える。
まさしく「脱兎」の勢いであった。兎が渾身の力を振り絞ったなら、ここまで早く走れるのかと感心するほどの速度で走った。弾丸速度。天は素晴らしい能力を兎に与えたのだと誰もが感心せずにはおれなかった。
しかし、速度がつきすぎた。最高速度でカーブに突っ込んではいけない。コーナーワークが重要なのだ。なのに、兎男には己の足の限界まで速度を上げることしか頭になかった。脚力だけで勝負がつくと思っていたのだ。
運の悪いことに前方に大きな切り株があった。兎男はこれに激突し、失神してしまった。その間、亀組の最終走者はゴールラインを越えてしまった。
男は兎男を鍬に結わいつけると、家に持ち帰った。翌日から、この農夫は畑仕事をやめ、切り株の横に座っては兎が切り株に頭をぶつけるのを待ち伏せするようになった。

 

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